女王様の子分

「来週、空いてる?」
「えーいつ退院したの?」
「退院はこの前だけど」
「だってどこの病院か教えてくれないから、お見舞いにも行けなかった。プンプン」
「ゴメンゴメン。入院するまで忙しくて。退院するときも1週間くらいは病院で仕事の打合せしたりでね。仕事関係以外の人にはメールも電話もしてないのよ」
「まあとにかく退院おめでとう。退院祝いしなくっちゃ」
「その件でね。渋谷で美味しい生酒持ち込んであげるから、中目黒で1本キープしてくれない?」
「金曜日以外ならいつでもいいよ」

「そうそう、その生酒ね、6-30にあげようと思って入院前から冷蔵庫に入れておいたのよ。入院中に母がウチに来てね。母は知っている様に飲み助でしょ。冷蔵庫で見つけて飲もうかと思ったけどちょっと変わっているなと思って残して置いたんだって。よかったわね」
 
突然女王様からの電話。以前から脚の具合が悪くて手術するために入院するとは言っていたけど、突然連絡がなくなったから心配していました。

 
「病院でね、いっぱい先生と仲良くなって。そのうち3人は私の子分よ。内臓疾患じゃないから食事はしっかりできるでしょ。お昼なんか4人で真っ先に食堂に行って食べていたわ。退院するときも『僕たちを捨てていくのか』とすがられたわ」
ヨーク分かります。彼女は女王様やから、常に周りに男を侍らせてチヤホヤされていないと気にいらない。しかも男の方から寄ってくる。男心を弄ぶのも手慣れたものです。若い男の医者を子分にするのも当たり前か。

 
そんな女王様が6-30に声をかけるのは彼女の七不思議の1つらしい。6-30だって不思議です。ただ彼女の周りの人間とはいっさい無関係なので、彼女が気を許して本音をしゃべる事ができる飲み友達なのかなとは思います。それに電話1本でいつでも駆けつける子分の一人やし。