藪医者と安楽死

「あそこの医者、ヤブという評判よね」
「まだタケノコ医者じゃなくて良かったじゃん」
「エッ?」
「まだヤブ医者にもなれないタケノコ医者」
「まだヒヨコにもなれない医者のタマゴみたいなもの?」
 
「でもなんで○○通りの医院は藪医者なの?あの先生は人当たりもいいし、やさしいし」

「なにかというと、すぐ入院させるしさ。この前に飼っていた犬が病気になったので連れていったら、
『2,3日入院させて様子見ましょう』
て言われて、金かかるけどしょうがないと思って入院させたら、その日に死んじゃって。息子は遊びに行って、まだ携帯がないころだったから連絡とれないし。しかも帰ってきてから怒るのよ。
『そんな状態だったら最後までついていたのに。大丈夫というから遊びに行ったのに』
家族同然に可愛がっていたから無理もないけど」

 
医者の見立てが間違えれば、信頼感は無くなります。ヤブ医者と言われてもしょうがないな。
「その点、三○の女医さんは評判がいいわよ。うちも前に飼っていた犬がいよいよと言う時に連れて行ったら、
『もう無理ですから、そのまま家で最後まで一緒にいるか、それとも苦しんでいるのが忍びないなら安楽死させますか?』
ときくのよ。あの時は安楽死について考えたわね。周りは最後まで手を尽くしたいと思うけど、それは周りの自己満足であって、本人は苦しみが長引いているだけかもしれないなと思った」