花嫁の父

誰がためにかりんは鳴る
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11月27日 「花嫁の父」

母が帰ってきた。ホームページ見れたの、などと言葉を交わしたのち、台所でワシワシと白菜を切りながら、くるっと振り向いて一言
「なんか結婚するみたいよ?」
あんぐりと口を開けている私の横で、父はモニターを見詰めたまま「ええー?」と平板な発音で言った。
「お父さん……」
「……」
「お父さん」
「ナニ」
「結婚しようって言われてね」
「なーんでそんなこと言われるのー」

と言いつつ父の声は別段、怒っていない。上機嫌でもないが、ショックを受けたという様子でもない。フンだ、といった表情でモニターの中の文章を追っている。
・・・
そんな父の寝顔を見ながら、私は母に尋ねた。
「別にびっくりしてないでしょ。この人、娘が結婚するくらいで動じる人やないわ。見なさい、この寝顔を」
「さみしくないのかな」

「この人は私さえいればさみしくないのよ。パパ!パーパ!いびきうるさい!お布団で寝なさい!もう」
父は母にたたき起こされて、寝ぼけながら寝室に歩いていった。

娘が結婚すると聞かされて父親がさみしくないわけ無いけど、いずれ離れる覚悟はできているし、それ以上に愛する奥さんがいて自分が夢中になれるインターネットがあるから、乗り越えられるんじゃないかな。