カワイーイ

ママ聞いてよ。
「カワイーイ。クマさんみたい」
なんでこいつだけ女にもてるんだ。本当に腹が立ってくる。
○長さんが何をぼやいているのかと思ったら、どうも6-30の事らしい。
 
○長さんの所では月に2回、囲碁将棋教室が開催されている。超初心者向け。小さい子ども達に囲碁や将棋に親しみを持って楽しんでもらおうと。たまたま今日は暇だったので顔を出したら、先生の内お一人が体調を崩してお休み。そこで「6-30で良かったら子ども達のお相手しましょうか」

 
実は囲碁将棋教室の先生の補助をするのは4回目。相手は小学校の低学年。コマの動かし方がやっと分かるレベルから結構手が読める程度まで。まだ定跡は無理かな。今日は兄妹の2人と2面差し。6-30の方が多面差しは久しぶりなので、最初の内はどちらの手番か分からないから、手順を数えて僕の番か。

 
最初は子ども達の強さが分からないから手加減なし。あっさり15分ほどで片付けて2局目は所々指導というか考えさせながら、やっていたらお兄ちゃんに角で王手飛車をかけられてしまった。まあその前に相手の飛車は取っていたので、飛車で合ゴマして「両取りにげるべからず。さあどちらの飛車を取る?」。妹さんには「居玉(王将が並べたままの位置から動かないこと)がよくないというのが分かるでしょ」

 
子ども達が真剣に6-30と将棋を指しているのを遠くから見ていた顔役の婦人連中が、口々に○長さんに「あの人カワイーイ」とか「クマさんみたい」とか言ったらしい。しかも年齢は36と40と40台と60前とか。しかも「ドコの人?」「どういう知り合い?」と○長に6-30のことを根掘り葉掘りの質問攻め。事情通は恐いです。

 
「近くのあの会社の寮の人で、ちょっとした知り合い」まさか飲み屋で知り合ったなんて口が裂けても言えないよね。○長やHさんはカワイーイなんて言われたことがないのに、なんで6-30ばかりがモテル?と思ったらしい。そんなの6-30の責任じゃないやい。もっともカワイーイと言われたのが分かってもそんなお年の女性に反論はできませんが。そりゃ6-30だって年上の飲み屋のママさんから「6-30て可愛い」と言われるのはお世辞だとわかっています。

 
その話を聞いた場末のスナックのママいわく
「そうなの。コイツは悪い奴なのよ。女性とみたら年なんて関係なし。小さな子から60すぎた女性まで相手選ばず優しくするのね。だからみんな騙されて、もてるのよ」
「そんな犯罪者みたいに人聞きの悪い言い方しなくても」
「6-30が20歳の女の子に手を出したら犯罪だかんね」
「6-30だって相手を選ぶけど、相手にも選ぶ権利があるから」
「6-30には選ぶ権利はないの。ママにしときなさい。コイツはママにだけは優しくないから。お世辞のひとつも言いやしない。本当に可愛くない」

「お世辞を言わないのは、6-30がママのことを好きだからでしょ」
「今日はめずらしくカワイーイこと言うのね」
でも選ばれる権利は否定されなかったからヨシとしよう。でもホンマにカワイーイなんて言われたのは久しぶりでした。