方言なんですか?

「フトン、ひいといて」
居酒屋のマスタのお兄さんが、携帯でしゃべっていた。
「今のはやっぱり江戸弁?」
「エッ、何?」
「だって、東北弁や江戸弁は、シトヒがひっくり返るでしょ」
「??」
「敷き布団(しきぶとん)をヒクて言うよね」
「でも、ゴザは敷く(しく)だよね」
 
「じゃあシーツは?」
「シーツは掛けるのよ」
「もう、先生は引っかき回さないの。掛けるというのは上に置く物に使うの」

「シーツは、ヒクかなシクかな」
「シーツのことは敷布と言いませんでした?」
「敷布は、ヒクだね」
 
そこへ若い客が来て、布団は自分で上げ下げするのかと尋ねたら、
「布団は自分でシキます」
なんとなく耳に違和感がある。
「ボカァ、今まで60年間、布団をヒクが標準語だと思ってた」
とマスタのお兄さん。
「でも漢字は敷くやし、ヒキ布団とは言わないよね」

 
「関西では掛け布団を掛けるじゃなくて、別の言い方しません?」
「毛布なんかは着る、て言うよ。今晩は冷え込むから毛布着て寝なあかんよ。て」
「昔は布団じゃなくて着物を掛け布団の変わりにしていたからかな?」
「ウチの秋田じゃ、丹前を掛けて寝ました」
「新潟の女も、丹前をコタツで温めておいてから被って寝たと言ってたね」

「敷き布団はヒイて、掛け布団は着て寝るのが正しい日本語やと思う」
「確かに、布団をヒクという人が半分以上いると思うな」
「布団をシクのは方言で、後から敷くという漢字を当てたんじゃないかな?」
「でも布団をヒクというのは、今までで一番疑わずに使っていた言葉だと思う」
 
丹前を知らない話と、雪国では二人で寝る時は寝間着を着ない方が暖かいという話は、その内に書きます(多分)。